手足口病とヘルパンギーナの違いは?|症状・受診・登園の目安を解説

夏になると、子どもを中心に流行しやすくなる「手足口病」と「ヘルパンギーナ」。
どちらも発熱や口の中の水疱、のどの痛みがみられるため、保護者の方から「どちらなのか分からない」「病院を受診した方がよいですか」と相談されることが多い感染症です。
どちらも多くの場合は自然に回復しますが、口の痛みで水分がとれず、脱水になることがあります。また、まれではあるものの、注意が必要な合併症を伴うこともあります。
手足口病とヘルパンギーナの違い

手足口病とヘルパンギーナは、どちらも乳幼児を中心に春から夏に流行するウイルス感染症です。一般に「夏かぜ」と呼ばれる病気の一つで、主にコクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスによって起こります。
原因となるウイルスには複数の種類があるため、一度かかったことがあっても、別の型のウイルスによって再び発症することがあります。
飛沫感染や接触感染のほか、便に含まれるウイルスが手を介して口に入ることでも感染します。
共通する特徴
どちらの病気でも、次のような症状がみられます。
- 発熱
- 口やのどの痛み
- 口の中の水疱や潰瘍
- 食欲の低下
- 水分がとりにくくなる
一方で、発疹が現れる場所や発熱の程度には違いがあります。
症状の違い
| 症状 | 手足口病 | ヘルパンギーナ |
|---|---|---|
| 発熱 | 出ないことや軽いことも多い | 突然高熱が出ることがある |
| 口の症状 | 口の中や舌の水疱・口内炎 | 上あごやのどの奥の水疱・潰瘍 |
| 皮膚の発疹 | 手のひら、足の裏、おしりなど | 通常は手足に現れない |
| 主な注意点 | 口の痛み、脱水 | 強いのどの痛み、脱水 |
手足に発疹があれば手足口病、手足には発疹がなく、突然の高熱とのどの奥の水疱が目立つ場合はヘルパンギーナが疑われます。
ただし、症状だけでは区別しにくいこともあります。診察では、発疹の場所やのどの状態、発熱の経過、全身状態などから総合的に判断します。
原因となるウイルスと感染経路
原因となるウイルス
手足口病とヘルパンギーナは、どちらもエンテロウイルスの仲間によって起こります。
手足口病の主な原因には、次のようなウイルスがあります。
- コクサッキーウイルスA6
- コクサッキーウイルスA10
- コクサッキーウイルスA16
- エンテロウイルス71
ヘルパンギーナは、主にコクサッキーウイルスA群によって起こります。
原因となるウイルスには複数の種類があるため、一度かかったことがあっても、別の型のウイルスに感染して再び発症することがあります。
主な感染経路
主な感染経路は次の3つです。
- 飛沫感染
咳やくしゃみ、会話による飛沫を吸い込んで感染します。 - 接触感染
唾液や鼻水、ウイルスが付着した手、おもちゃ、タオルなどを介して感染します。 - 糞口感染
便に含まれるウイルスが、手を介して口に入ることで感染します。
症状が改善した後も、便の中には数週間以上ウイルスが排出されることがあります。また、感染していても症状が出ないままウイルスを排出する場合があります。
そのため、発疹が消えるまで長期間隔離することよりも、トイレやおむつ交換後の手洗いを続けることが重要です。
手足口病の主な症状

手足口病では、感染してから3~5日ほどの潜伏期間を経て、口の中や手足に小さな水疱性の発疹が現れます。
発疹が出やすい場所
- 口の中や舌
- 手のひら
- 手の指
- 足の裏
- 足の甲
- おしり
- 膝や肘の周辺
一般的には、2~3mm程度の小さな水疱がみられます。原因となるウイルスの型によっては、腕、脚、顔、体など広い場所に発疹が出ることもあります。
発疹は水ぼうそうとは異なり、通常はかさぶたを作らず、数日から1週間程度で自然に改善します。
熱が出ないこともある
手足口病では発熱しないこともあり、熱が出ても38℃以下の軽い発熱にとどまることが多くあります。
熱が低いからといって症状が軽いとは限りません。口の中に水疱や潰瘍ができると、飲み物や食べ物がしみて、水分や食事を嫌がることがあります。
乳幼児では、次のような様子が口の痛みのサインになります。
- よだれが増える
- 飲み物を嫌がる
- 食事中に泣く
- 急に食欲が落ちる
- 機嫌が悪くなる
回復後に爪がはがれることがある
原因となるウイルスによっては、症状が治ってから数週間後に手足の爪が浮いたり、はがれたりすることがあります。
多くの場合は、新しい爪が自然に生えてきます。痛み、腫れ、膿などがある場合や、爪の変化が強い場合は医療機関へご相談ください。
ヘルパンギーナの主な症状

ヘルパンギーナは、突然の高熱とのどの奥にできる水疱や潰瘍が特徴です。
突然の高熱
それまで元気だった子どもに、突然39℃前後の高熱が出ることがあります。
発熱は2~4日程度で治まることが多いものの、熱が下がった後ものどの痛みが残り、水分や食事をとりにくくなる場合があります。
のどの奥にできる水疱・潰瘍
口を開けると、上あごの奥や口蓋垂の周辺、のどの奥に小さな赤い発疹がみられます。その後、水疱となり、破れて潰瘍になることがあります。
主な症状は次のとおりです。
- 突然の高熱
- のどの強い痛み
- 上あごやのどの奥の水疱・潰瘍
- 食欲の低下
- 水分を嫌がる
- よだれが増える
- 機嫌が悪くなる
- 頭痛
- 嘔吐
ヘルパンギーナでは、通常、手のひらや足の裏には発疹が出ません。手足の発疹が目立つ場合は、手足口病など別の感染症を考えます。
どのように診断する?
手足口病とヘルパンギーナは、一般的には症状と診察所見から診断します。
診察では、次の点を確認します。
- 発疹が出ている場所
- 発疹や水疱の形
- 口やのどの水疱・潰瘍
- 発熱の程度と経過
- 周囲での流行状況
- 水分や食事がとれているか
- 尿が出ているか
- 元気や反応に問題がないか
典型的な症状であれば、ウイルスを特定するための検査を毎回行う必要はありません。
一方、症状や発疹の状態によっては、次のような病気との区別が必要です。
- 水痘(水ぼうそう)
- とびひ
- 単純ヘルペス感染症
- アフタ性口内炎
- 溶連菌感染症
- 咽頭結膜熱
- 新型コロナウイルス感染症
- その他の発熱を伴う感染症
発疹の見た目だけで判断することが難しい場合もあるため、気になるときは小児科などの医療機関へご相談ください。
治療と家庭での過ごし方

治療は対症療法が中心
手足口病とヘルパンギーナには、一般的に使用する特効薬はありません。
治療は、発熱や痛みを和らげながら、自然に回復するのを待つ対症療法が中心です。症状が強い場合には、年齢や体重に応じた解熱鎮痛薬を使用することがあります。
どちらもウイルス感染症のため、通常は抗菌薬、いわゆる抗生物質は必要ありません。ただし、診察で別の細菌感染症が疑われた場合には、異なる治療が必要です。
食事よりも水分補給を優先しましょう
口やのどが痛いときは、無理に普段どおりの食事を食べさせる必要はありません。まずは、水分がとれているかを確認しましょう。
一度にたくさん飲ませるのではなく、少量ずつ、こまめに与えることがポイントです。
比較的とりやすいものには、次のようなものがあります。
- 水や麦茶
- 経口補水液
- 冷ましたスープ
- ゼリー
- プリンやヨーグルト
- 柔らかいうどんやおかゆ
熱いものや酸味の強いジュース、塩辛いものは、口内炎やのどの潰瘍にしみることがあります。冷たく、柔らかく、薄味のものを選びましょう。
入浴は全身状態に合わせる
高熱がある、ぐったりしている、水分が十分にとれていない場合は、無理に入浴させる必要はありません。
熱が下がり、元気があり、水分もとれていれば、短時間のシャワーや入浴は可能です。
発疹を強くこすらず、入浴後は清潔なタオルを使用してください。家族でのタオルの共用は避けましょう。
医療機関を受診する目安

手足口病やヘルパンギーナの多くは、数日から1週間ほどで自然に回復します。ただし、症状が軽ければ受診してはいけないということではありません。
発疹の中には、水痘やとびひなど、手足口病と見分けにくいものもあります。
「この程度で受診してよいのかな」と迷う場合も、遠慮なく医療機関へご相談ください。
多くの場合は自然に回復しますが、口やのどの痛みによる脱水には注意が必要です。
早めに受診したい症状
次のような症状がある場合は、医療機関への受診をご検討ください。
- 水分がほとんどとれない
- おしっこの回数や量が減っている
- 口の痛みが強く、飲食できない
- 高熱が続いている
- 嘔吐を繰り返している
- いつもより元気がない
- 発疹の原因が分からない
水分がとれているかだけでなく、尿の回数、顔色、機嫌、呼びかけへの反応も確認しましょう。
速やかな受診が必要な症状
次のような症状がある場合は、時間帯にかかわらず速やかに医療機関へ相談してください。
- 顔色が悪く、ぐったりしている
- 呼びかけへの反応が悪い
- 強い頭痛がある
- 視線が合いにくい
- 呼吸が速い、息苦しそう
- けいれんを起こした
手足口病やヘルパンギーナでは、まれに髄膜炎や脳炎、心筋炎などを合併することがあります。発疹の多さだけで判断せず、お子さんの元気や反応、呼吸状態を確認することが大切です。
家庭内での感染対策
手足口病とヘルパンギーナを完全に防ぐことは難しいものの、基本的な感染対策によって家庭内や集団生活での感染リスクを減らせます。
手洗いを続ける
特に次のタイミングでは、石けんと流水で丁寧に手を洗いましょう。
- トイレの後
- おむつ交換の後
- 鼻水や唾液を拭いた後
- 食事を作る前
- 食事の前
- 帰宅したとき
アルコール消毒だけに頼らず、流水と石けんによる手洗いを基本とします。
タオルや食器の扱い
- タオルを家族で共用しない
- コップや食器の共用を避ける
- 唾液や鼻水が付いたおもちゃを清潔にする
- おむつは適切に処理する
- 咳やくしゃみがある場合は咳エチケットを行う
症状が治った後も便にはウイルスが排出されるため、登園・登校を再開した後も手洗いを続けましょう。
予防接種はある?
現在、日本で手足口病やヘルパンギーナの予防に一般的に使用されているワクチンや予防薬はありません。
日常的な手洗い、おむつや排泄物の適切な処理、タオルを共用しないことが予防の基本です。
保育園・幼稚園・学校はいつから行ける?

手足口病とヘルパンギーナには、インフルエンザのような全国一律の出席停止期間は設けられていません。
ウイルスの排出期間が長いため、発疹が完全に消えるまで全員を休ませても、感染拡大を完全に防ぐことは難しいとされています。
登園・登校を再開する目安
次の状態まで回復していることが目安です。
- 熱が下がっている
- 全身状態がよい
- 元気が戻っている
- 口やのどの痛みが落ち着いている
- 普段に近い食事がとれる
- 十分な水分がとれる
- 集団生活に支障がない
手足の発疹が残っていても、熱がなく、普段どおり食事や水分がとれ、元気に集団生活を送れる場合は、登園・登校できることがあります。
ただし、保育園、幼稚園、こども園、学校によっては、登園届や医師の意見書など独自のルールを設けている場合があります。登園・登校前に施設へ確認してください。
よくある質問
手足口病やヘルパンギーナには何度もかかりますか?
どちらも原因となるウイルスが一種類ではないため、一度感染しても、別の型のウイルスによって再び発症することがあります。
「以前かかったから今回は違う」とは限りません。発熱や口の痛み、手足の発疹がみられた場合は、改めて症状を確認しましょう。
発疹が残っていても登園できますか?
熱がなく、食事や水分が普段に近い状態まで戻り、集団生活に支障がなければ、発疹が残っていても登園できることがあります。
ただし、園ごとに対応が異なるため、事前に確認してください。
手足口病と水ぼうそうはどう見分けますか?
手足口病は、手のひらや足の裏、口の中、おしりなどに発疹が出やすい病気です。
水ぼうそうでは、体や顔、頭皮など広い範囲に、赤い発疹や水疱、かさぶたが混在して現れることがあります。見た目だけでは判断が難しい場合もあるため、発疹が広がっている場合は医療機関にご相談ください。
大人にも感染しますか?
大人にも感染することがあります。
家庭内で子どもから保護者へ感染することもあるため、おむつ交換後やトイレの後の手洗いを徹底しましょう。
大人に発熱、強いのどの痛み、手足の発疹などが出た場合も、必要に応じて医療機関へご相談ください。
まとめ
手足口病とヘルパンギーナは、どちらも乳幼児を中心に夏に流行するエンテロウイルス感染症です。
主な違いは次のとおりです。
- 手足口病
口の中に加え、手のひら、足の裏、おしりなどに発疹が出やすい - ヘルパンギーナ
突然の高熱と、上あごやのどの奥にできる水疱・潰瘍が目立つ
どちらも多くの場合は自然に回復し、治療は症状を和らげる対症療法が中心です。
口やのどの痛みがあるときは、食事量よりも水分がとれているかを優先して確認してください。水分摂取量だけでなく、尿の回数、顔色、元気、呼びかけへの反応も重要です。
熱がなく、全身状態がよく、普段に近い食事や水分がとれれば、発疹が残っていても登園・登校できることがあります。ただし、施設ごとの決まりも確認しましょう。
岐阜市のさぎ山クリニックでは、子どもの発熱、口やのどの痛み、手足の発疹、食欲低下などの診療に対応しています。
「手足口病かヘルパンギーナか分からない」「水分が十分にとれているか心配」「登園してよいか判断に迷う」という場合も、遠慮なくご相談ください。
手足口病・ヘルパンギーナが心配な方はさぎ山クリニックへ
岐阜市鷺山北町にあるさぎ山クリニックの小児科では、手足口病やヘルパンギーナをはじめ、子どもの発熱、発疹、口やのどの痛みなどの診療を行っています。
診察では、発疹が現れている場所、口やのどの状態、発熱の経過に加え、水分摂取量、尿の回数、顔色、機嫌などを確認します。手足口病とヘルパンギーナは症状が似ているほか、水痘やとびひなど、ほかの病気との区別が必要になることもあります。
お子さんの発熱や発疹、口・のどの痛みが気になる方は、お気軽にご相談ください。
【参考文献】
・厚生労働省「手足口病」
・厚生労働省「ヘルパンギーナ」
・日本小児科学会「手足口病」
・日本小児科学会「ヘルパンギーナ」
・日本小児科学会「幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」
・こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」