イメージ画像
医療コラム
2026.07.30

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査と診断|AHI・簡易検査・PSGをわかりやすく解説

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり浅くなったりする病気です。

大きないびきや日中の眠気が代表的な症状ですが、本人が睡眠中の異常に気付くことは少なく、家族から「呼吸が止まっていた」と指摘されたことをきっかけに受診される方も少なくありません。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質を低下させるだけでなく、高血圧や心房細動、心不全、脳卒中などの循環器疾患とも深く関係しています。そのため、症状がある場合には適切な検査を受け、重症度を評価することが重要です。

現在では、自宅で行える簡易検査から始めることが一般的で、必要に応じて専門施設でより詳しい検査を行います。

目次

睡眠時無呼吸症候群はどのように診断する?

睡眠時無呼吸症候群の診断では、「いびきがあるかどうか」だけで判断することはできません。

症状や生活習慣、体格、鼻や喉の状態を確認したうえで、睡眠中の呼吸状態を記録する検査を行い、無呼吸や低呼吸がどの程度起こっているかを評価します。

一般的な診断の流れは次のとおりです。

  1. 問診・診察
  2. 自宅で行う簡易検査
  3. 必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
  4. 重症度を判定し、治療方針を決定

すべての患者さんが最初から入院検査を受けるわけではなく、多くの場合は自宅で行える簡易検査から始めます。

まずは問診・診察で症状を確認します

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中だけでなく日中の症状も診断の重要な手がかりになります。

診察では、次のような内容を確認します。

睡眠中の症状

家族からの情報は、診断の参考になることが少なくありません。

日中の症状

睡眠の質が低下すると、日中にもさまざまな症状が現れます。

例えば、

などが代表的です。

仕事中や会議中、テレビを見ているときだけでなく、運転中に眠気を感じる場合は注意が必要です。

生活習慣や既往歴

睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病との関連が深いため、診察では次のような内容も確認します。

循環器疾患のある方では、睡眠時無呼吸症候群を合併している割合が高いことが知られています。

耳鼻咽喉科で確認すること

睡眠時無呼吸症候群では、気道が狭くなる原因を調べることも重要です。

耳鼻咽喉科では、

などがないかを診察します。

鼻づまりや扁桃肥大が強い場合には、これらを治療することで症状が改善することがあります。

内科・循環器内科だけでなく、耳鼻咽喉科の視点から評価することも、適切な治療につながります。

AHI(無呼吸低呼吸指数)とは

睡眠時無呼吸症候群では、「AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)」という指標を用いて重症度を評価します。

AHIとは、睡眠1時間あたりに「無呼吸」と「低呼吸」が何回起こったかを示す数値です。

例えば、7時間眠っている間に70回の無呼吸・低呼吸が認められた場合、AHIは10となります。

この数値が高いほど、睡眠中に呼吸が止まる回数が多く、重症度も高くなります。

AHIによる重症度の目安

AHI重症度
5未満正常
5以上15未満軽症
15以上30未満中等症
30以上重症

ただし、AHIだけで治療方針が決まるわけではありません。

日中の眠気や循環器疾患の有無、仕事への影響、生活の質(QOL)なども総合的に評価したうえで治療方法を決定します。

自宅でできる簡易検査

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、多くの患者さんではまず自宅で行える簡易検査を実施します。

検査機器を自宅へ持ち帰り、普段どおり眠るだけで睡眠中の呼吸状態を調べることができます。

検査当日は、

などを装着して就寝します。

翌日、機器を返却すると記録されたデータを解析し、睡眠中の無呼吸や低呼吸の回数、酸素濃度の変化などを評価します。

自宅で行えるため身体への負担が少なく、普段の睡眠環境で検査できることが大きなメリットです。

簡易検査だけでは分からないこと

簡易検査は睡眠時無呼吸症候群の診断に有用ですが、すべての情報を評価できるわけではありません。

例えば、

などは簡易検査では詳しく調べることができません。

また、簡易検査で異常が認められなかった場合でも、症状が強い方や診断が難しい方では、より詳しい「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」が必要になることがあります。

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは

簡易検査で睡眠時無呼吸症候群が疑われた場合や、症状と検査結果が一致しない場合には、「終夜睡眠ポリグラフ検査(Polysomnography:PSG)」を行います。

PSGは睡眠時無呼吸症候群を詳しく評価するための標準的な検査で、「精密検査」とも呼ばれます。

簡易検査が主に呼吸の状態を調べるのに対し、PSGでは睡眠そのものの状態も含めて総合的に評価します。

検査では一晩かけて睡眠中のさまざまな情報を記録し、無呼吸の有無だけでなく、睡眠の質や原因についても詳しく調べることができます。

PSGでは何を調べるのか

PSGでは、次のような項目を同時に測定します。

これらの情報を組み合わせることで、「どのような睡眠になっているのか」「どの程度の無呼吸が起きているのか」を詳しく評価します。

睡眠時無呼吸症候群だけでなく、その他の睡眠障害が疑われる場合にも有用な検査です。

精密検査が勧められるケース

すべての患者さんにPSGが必要なわけではありません。

一般的には、次のような場合に精密検査が検討されます。

患者さんの症状や基礎疾患を踏まえ、必要に応じて専門医療機関でPSGを受けていただく場合があります。

検査結果はどのように評価するのか

睡眠時無呼吸症候群の診断では、AHIだけでなく検査全体の結果を総合的に判断します。

例えば、

などを確認し、重症度や原因を評価します。

また、高血圧や心房細動、心不全などの循環器疾患を合併している場合には、それらの病気との関連も考慮しながら治療方針を決定します。

検査結果は数値だけで判断するものではなく、症状や生活への影響も含めて総合的に評価することが大切です。

検査を受けた方がよい方

睡眠時無呼吸症候群は、自覚症状だけでは判断が難しい病気です。

次のような方は、一度検査を検討することをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群は、早期に診断し適切な治療につなげることで、睡眠の質だけでなく全身の健康維持にもつながります。

よくある質問

Q. 簡易検査は痛みがありますか?

ありません。指先や鼻にセンサーを装着して就寝するだけで、普段どおりの生活を送りながら検査を受けることができます。

Q. 検査は入院が必要ですか?

最初の検査は自宅で行う簡易検査が一般的です。精密検査(PSG)が必要と判断された場合には、専門医療機関で一泊入院または睡眠検査室で検査を行うことがあります。

Q. AHIが高いと必ずCPAP治療になりますか?

AHIは重要な指標ですが、それだけで治療方針が決まるわけではありません。症状の程度や日中の眠気、合併している病気などを総合的に評価して治療方法を決定します。

Q. 簡易検査で異常がなければ安心ですか?

症状が強い場合や、睡眠時無呼吸症候群が強く疑われる場合には、簡易検査だけでは診断できないことがあります。そのような場合はPSGによる詳しい検査を検討します。

Q. 睡眠時無呼吸症候群は何科を受診すればよいですか?

睡眠時無呼吸症候群は、呼吸だけでなく全身に影響する病気です。内科・循環器内科では高血圧や心疾患との関連を評価し、耳鼻咽喉科では鼻づまりや扁桃肥大など気道の状態を確認します。それぞれの診療科が連携して診療することが大切です。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群の診断では、問診や診察に加え、睡眠中の呼吸状態を評価する検査が欠かせません。

多くの場合は自宅で行える簡易検査から始め、必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行います。AHIや酸素飽和度、睡眠の状態などを総合的に評価することで、病気の重症度や適切な治療方針を判断します。

大きないびきや日中の眠気だけでなく、高血圧や心房細動、心不全などの循環器疾患がある方では、睡眠時無呼吸症候群が背景にあることも少なくありません。気になる症状がある場合は、早めに検査を受けることが大切です。

睡眠時無呼吸症候群のご相談はさぎ山クリニックへ

岐阜市鷺山北町にあるさぎ山クリニックの内科・循環器内科・耳鼻咽喉科では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査・診療を行っています。

当院では、自宅で睡眠中の呼吸状態や血液中の酸素濃度などを調べる簡易検査に対応しています。検査結果に加えて、いびきや日中の眠気、体格、鼻や喉の状態、高血圧・心房細動などの合併症も確認し、総合的に評価します。

内科・循環器内科・耳鼻咽喉科が連携できる体制を整えており、鼻づまりや扁桃肥大などが疑われる場合には、上気道の状態も確認します。

大きないびき、睡眠中の無呼吸、日中の強い眠気、起床時の頭痛などが気になる方や、ご家族から呼吸が止まっていると指摘された方は、お気軽にご相談ください。

いびきや日中の眠気が気になる方、ご家族から無呼吸を指摘された方は、お気軽にご相談ください。

【参考文献】
・日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
・日本循環器学会「2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」