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医療コラム
2026.08.05

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療|CPAP・マウスピース・耳鼻咽喉科で行う治療を解説

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まることで睡眠の質が低下し、日中の眠気や倦怠感を引き起こす病気です。

さらに、高血圧や心房細動、心不全、脳卒中などの循環器疾患とも深く関係しており、適切な治療を行うことが将来の健康維持にもつながります。

睡眠時無呼吸症候群の治療は一つではありません。

無呼吸の程度や原因、体格、鼻や喉の状態、基礎疾患などを総合的に評価し、一人ひとりに合った治療方法を選択します。

目次

睡眠時無呼吸症候群の治療方針

睡眠時無呼吸症候群は、検査結果だけで治療方法が決まるわけではありません。

無呼吸の重症度に加え、

を総合的に評価し、治療方針を決定します。

例えば、鼻づまりが主な原因であれば耳鼻咽喉科での治療が有効なことがあります。一方、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群では、CPAP療法が第一選択となることが多くあります。

CPAP療法とは

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:経鼻的持続陽圧呼吸療法)は、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する標準的な治療です。

睡眠中に鼻へ装着したマスクから一定の圧力で空気を送り続けることで、喉の奥が塞がるのを防ぎ、呼吸を維持します。

睡眠時無呼吸症候群では、眠ると舌や軟口蓋が喉の奥へ落ち込み、空気の通り道が狭くなります。

CPAPは空気で気道を内側から支えるような役割を果たし、睡眠中も気道を開いた状態に保ちます。

その結果、無呼吸や低呼吸が大きく減少し、睡眠の質が改善します。

現在では世界中で広く行われており、睡眠時無呼吸症候群の治療として最も効果が確立されている方法です。

CPAP療法が勧められる方

一般的には、

などの場合にCPAP療法が検討されます。

また、仕事で自動車を運転する機会が多い方では、安全面からも積極的な治療が勧められることがあります。

保険診療でCPAP療法を受けるためには、検査結果など一定の条件を満たす必要があります。

CPAP療法で期待できる効果

CPAP療法を継続することで、さまざまな改善が期待できます。

日中の眠気の改善

睡眠が深くなり、日中の眠気や集中力の低下が改善する方が多くみられます。

仕事や学業のパフォーマンス向上につながることも少なくありません。

睡眠の質が向上する

睡眠中の覚醒反応が減少し、熟睡感が得られるようになります。

「朝すっきり起きられるようになった」「疲れが残りにくくなった」と感じる方もいます。

高血圧の改善

睡眠中の交感神経の過剰な働きが抑えられることで、血圧の改善が期待できます。

特に治療抵抗性高血圧では、睡眠時無呼吸症候群を治療することで降圧効果が得られることがあります。

心臓への負担を軽減する

睡眠中の酸素不足が改善されることで、心臓への負担も軽減されます。

心房細動や心不全など循環器疾患をお持ちの方では、適切なCPAP治療が病状の安定につながることも報告されています。

CPAP療法の継続の重要性

CPAPは非常に効果の高い治療ですが、装着した日だけ効果を発揮する治療でもあります。

使用を中断すると、無呼吸は再び起こるため、継続して使用することが重要です。

治療開始直後はマスクに違和感を覚えることがありますが、多くの方は徐々に慣れていきます。

マスクにはさまざまな種類があり、顔の形や呼吸の仕方に合わせて選択できます。

空気圧の調整やマスクの変更によって快適に使用できることも多いため、違和感がある場合は自己判断で中止せず、主治医へ相談することが大切です。

マウスピース(口腔内装置)による治療

睡眠時無呼吸症候群では、**マウスピース(口腔内装置:Oral Appliance)**が適応となる場合があります。

就寝時に装着することで下あごを少し前方へ保持し、舌が喉の奥へ落ち込むのを防ぐことで気道を広げます。

CPAP療法のように機械を使用しないため、比較的手軽に始められる治療方法です。

マウスピースが適している方

一般的には、次のような方が対象となります。

一方で、重症の睡眠時無呼吸症候群では十分な改善が得られないこともあり、CPAP療法が第一選択となる場合があります。

また、歯や顎の状態によっては適応にならないこともあるため、歯科で詳しい診察を受けたうえで作製します。

マウスピースのメリット・デメリット

メリット

デメリット

耳鼻咽喉科で行う治療

睡眠時無呼吸症候群では、鼻や喉の構造が原因となっていることも少なくありません。

そのため、耳鼻咽喉科で原因を評価し、必要に応じて治療を行うことが重要です。

アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎の治療

鼻づまりがあると口呼吸になりやすく、睡眠中に気道が狭くなる原因になります。

薬物療法や鼻の処置によって鼻呼吸が改善すると、睡眠の質が向上することがあります。

また、CPAP療法を行う方では、鼻づまりを改善することでマスクが使いやすくなり、治療の継続にもつながります。

鼻中隔弯曲症

鼻の中央にある鼻中隔が大きく曲がっていると、慢性的な鼻づまりの原因になります。

症状が強い場合には、鼻中隔矯正術などの手術が検討されることがあります。

扁桃肥大・アデノイド肥大

扁桃やアデノイドが大きいと、睡眠中に気道が狭くなりやすくなります。

特に小児では代表的な原因ですが、大人でも扁桃肥大が睡眠時無呼吸症候群の原因となることがあります。

必要に応じて、扁桃摘出術などの手術が選択されることもあります。

耳鼻咽喉科治療だけで改善することもあります

睡眠時無呼吸症候群の原因が鼻や喉の病気にある場合には、その治療によって症状が改善することがあります。

一方で、肥満や骨格など複数の要因が関係していることも多く、耳鼻咽喉科の治療だけでは十分な改善が得られない場合には、CPAP療法やマウスピース治療を組み合わせて行います。

原因に応じた治療方法を選択することが大切です。

生活習慣改善の重要性

睡眠時無呼吸症候群では、生活習慣の見直しも治療の一つです。

減量

肥満は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の代表的な危険因子です。

体重が減少すると喉の周囲の脂肪が減り、気道が広がることで症状が改善する場合があります。

特にBMIが高い方では、減量によってAHIが改善することもあります。

飲酒を控える

アルコールには筋肉を弛緩させる作用があります。

就寝前の飲酒によって舌や喉の筋肉が緩み、無呼吸が悪化することがあります。

飲酒習慣がある方では、就寝前の飲酒を控えることが勧められます。

禁煙

喫煙は気道の慢性的な炎症を引き起こし、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる要因になります。

禁煙は睡眠時無呼吸症候群だけでなく、循環器疾患や呼吸器疾患の予防にもつながります。

睡眠姿勢

仰向けで眠ると舌が喉の奥へ落ち込みやすくなります。

体位によって無呼吸が増える方では、横向きで寝る工夫が症状の改善につながることがあります。

治療は継続することが大切です

睡眠時無呼吸症候群は、一度治療を始めて終わりではありません。

CPAP療法やマウスピース治療を継続しながら、体重や血圧、日中の眠気などの変化を定期的に確認することが重要です。

また、生活習慣の改善によって症状が変化することもあるため、治療内容を見直しながら長期的に管理していきます。

よくある質問

Q. CPAPは一生続けなければいけませんか?

原因によって異なります。肥満の改善や耳鼻咽喉科での治療により症状が軽減し、CPAPが不要になる方もいます。一方で、重症例では長期間の治療が必要になることがあります。

Q. CPAPを毎日使用する必要がありますか?

はい。CPAPは使用した日に効果を発揮する治療です。使用しない日は再び無呼吸が起こるため、毎日継続することが大切です。

Q. CPAPを使用するといびきは改善しますか?

多くの方で改善が期待できます。いびきの軽減は、ご家族が最初に気付く変化の一つです。

Q. 減量だけで治ることはありますか?

肥満が主な原因の場合は、減量によって症状が改善することがあります。ただし、骨格や鼻づまりなど他の要因も関係していることが多いため、自己判断で治療を中止せず、定期的な評価を受けることが重要です。

Q. 耳鼻咽喉科で手術を受ければ必ず治りますか?

原因が鼻中隔弯曲症や扁桃肥大などの場合には改善が期待できますが、睡眠時無呼吸症候群の原因は一つではありません。手術だけで十分な改善が得られない場合には、CPAP療法やマウスピース治療を組み合わせることがあります。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群の治療には、CPAP療法、マウスピース治療、耳鼻咽喉科での治療、生活習慣の改善など、さまざまな選択肢があります。

治療方法は無呼吸の重症度だけでなく、原因や合併症、生活スタイルなどを総合的に考慮して決定します。

特に、高血圧や心房細動、心不全など循環器疾患を合併している方では、睡眠時無呼吸症候群を適切に治療することが全身の健康維持にもつながります。

症状を改善し、将来の合併症を予防するためにも、継続した治療と定期的な診察が大切です。

睡眠時無呼吸症候群の検査はさぎ山クリニックへ

岐阜市鷺山北町にあるさぎ山クリニックの内科・循環器内科・耳鼻咽喉科では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査・診療を行っています。

当院では、自宅で普段どおり眠りながら呼吸の状態を調べられる簡易検査に対応しています。検査結果だけでなく、いびきや日中の眠気、体格、高血圧・心房細動・心不全などの基礎疾患も含めて総合的に評価します。

鼻づまりや扁桃肥大などが疑われる場合には耳鼻咽喉科の視点からも確認し、精密検査(PSG)や専門的な治療が必要な場合には、連携する医療機関へご紹介します。

大きないびき、睡眠中の無呼吸、日中の強い眠気、起床時の頭痛などが気になる方や、ご家族から呼吸が止まっていると指摘された方は、お気軽にご相談ください。

【参考文献】
・日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
・日本循環器学会「2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」